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2014.01.16

40話 甲斐犬ゴマと、ゴマ母さん

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夏の終わりより入院中のゴマ母さんから電話があった。

「退院したよ!でもね、ゴマあげちゃおうと思って・・・。」

 



入院中、飼い犬の甲斐犬ゴマは息子さん宅に預けられていた。

予定なら、退院翌日、ゴマも戻ってくるはずだった。

ところが、以前からゴマを欲しがっていたご夫婦が、

その身体では散歩も厳しいだろうと、

この機会にゴマを引き取りたいと申し出たらしい。

たしかに入院前のような散歩はできない。

でもゴマが居るからリハビリにも生活にも前向きになれる。

退院早々、ゴマ母さんは苦渋の決断に迫られていたのだ。

「潮時かねっ。。」

憔悴しきったゴマ母さんの決断に、ろくな返答もできず電話を終えた。

実は、会話の中でちょっと引っかかった節があった。

“手放すからには、もうゴマには会わないでほしい”

ご夫婦の意向らしい。

厳しい・・・。 

ゴマのため、か。それとも自分らのため、か。

この際、犬の解明不可能な気持ちより

高齢のゴマ母さんの気持ち優先じゃないのか。

“リハビリ頑張って、たまにはゴマに会いに来てね”

くらいでいいから。。




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…ブルーだ。。もお全部ブルーだ。

夕方、散歩コースを外れて、ゴマ母さん宅の前を通った。

窓に、何か月ぶりかの灯りが見える。

玄関前にはスクーター。犬仲間が来ているようだ。

めでたいはずの退院日、窓の灯りとスクーターが

冷たい夕空のしたで、せめてもの救いに見えた。





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翌日、ゴマ母さんに会いにいった。

ゴマは居ない。まだ息子さん宅か、

それとも、すでにご夫婦宅にいったのか。

「お兄ちゃん!来てくれたの、わるいねぇ^^」

思いのほか元気な様子で安心したが、

「ゴマに会いたいよぉ。。あぁ、どうしようもないね。」

口にするのはゴマの事ばかり。

「あれはね、ゴマの好きな縫いぐるみ」

スヌーピーを指差しながら、力ない笑みを浮かべていた。

壁にはゴマの写真、写真、写真。。

十数年、ふたりでここに居たんだよなぁ。。

「・・・そいじゃ、また来るよ!」

もらったミカンをポッケに入れるところを

ペロに見られた。

なんだよペロ、食べたいか?

でも柑橘系は、犬には・・・

・・・・・・ペロょ、、どうしたらいいょ。。





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その週末。

クリスマス、イブイブ、イブイブイブかな。

家族旅行で山中湖に旅行中のことだった。

前日まで降り続いた雪でいっぱいのドッグランで、

携帯が鳴った。

ゴマ母さんだった。

何やらご機嫌な声で、

「ゴマ返してもらったよっ!もぉ心中覚悟だよっ!!」

な、なんだって!?

急展開に驚いたが、久しぶりに

ゴマ母さんらしい江戸弁が聞けてホっとした。

ペロっ!ゴマ還ってくるってよ^^!!

明日会いにいこうぜ。





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ゴマ母さん宅の前に着いた。

ワンワン、ワオォオ〜ン!

おっ、さっそく玄関先のペロに気付いたようだ。

またこの家からゴマの声を聞けて、本当に嬉しく思った。

「あがって、あがって〜!」

久しぶりに見るゴマは、相変わらず元気で安心した。

高齢を感じさせない身軽さで、

急な階段を軽快に上り下りして歓迎してくれている。

「よかったね〜ゴマ!おかえり〜^^!」

居間を覗くと、ゴマ母さんがおぼつかない足取りで何かしていた。

元気なゴマとは対照的な、ゴマ母さんの重い足運びを目にして

正直、不安でいっぱいになってしまった。

本人が一番わかっていたと思う。

この先、ゴマの満足できる散歩、、、どころか、

今日の夕方の散歩にも、きっといけない。。

これじゃホントに、ゴマと心中覚悟だよぉ。

オレなんかが口をはさめない世界を目の当たりにして、

気が遠くなるのを感じた。

足もとで、ペロと戯れるゴマ。

ゴマに出会えてよかったよな、ペロよ。

オレも、ゴマ母さんには一宿一飯の恩義がある。

一宿はないが、以前、ミートソースと煮豚などを頂いた。

「夕方、また来ますよ^^!」

よし、毎日一回はここに来て、声掛けをしよう。

そしてゴマを散歩させてやろう。

過去や未来にとらわれず、今を素直に受けとめる。

全部、犬が教えてくれたことだ。

そして何より自分のためにしていることなんだ。





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ゴマの夕方散歩も四日目。

歩きながら、ゴマのお尻を鼻先でツンツクつつくペロ。

ワンッ!!しつこいよ!と、

ペロの背中に歯を当てて叱るゴマ。

少しだけ反省の様子をみせるも、

ヘヘッ^^と、すぐ立ち直るペロ。

ペロには本当に大事な存在なんだよな。





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黄色信号。

マテっ。

立ち止まると同時に、スタッとオスワリしたゴマ。

つられてペロも、ちょこんとオスワリ。

青になったけど、、並んだ二匹の背中を

いつまでも見ていたかった。。





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翌朝、ゴマ母さんから電話がきた。

「ゴマ、すっ飛んでいったよ・・」

どうやら、またご夫婦が説得にきたらしい。

そして、決断。

「みんなに迷惑かけてるし・・」

「ゴマも長いことないしね、

 最後はどっかで落ち着かせてやりたい・・」

言葉に詰まったが、ゴマ母さんが決めたこと。

それを明るく後押しするしかないのかな。

「隣の隣のおじいちゃんにも知らせにいったよ・・」

隣の隣の90歳のおじいちゃんは、ゴマの朝散歩をしてくれていた方だ。

数ヶ月前に奥さんを亡くされたばかりで、

ここ数日、早朝のゴマとの散歩が楽しみだった。

「おじいちゃん、ビックリして、目大きくして、

 ア…アッ…、って言葉が出なくなっちゃったよ・・」

おじいちゃん、、、杖をついて、ゆっくり一歩一歩、

散歩というより、ゴマを大事にエスコートしているかのようだった。

コマンドなんて必要ない。

ゴマがしっかり、おじいちゃんに歩調を合わせていた。

もう見れないんだな、そんな暖かい光景も。

「夕方、また顔出しますから!」

そう、オレがブルーになってては良くない。

「そいじゃ、またあとで!」

ブルーブルーブルーブルー、、ブルーだ!!!





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そういえば牛乳がない!ってブツブツ言ってたな。

「牛乳屋さんですよ〜!ゴマ母さん元気〜^^?」

もちろん元気じゃなかった。

でも、それに同調していては、これっぽちも救えない。

「まずはゴマ母さん自身が、

 ひとりで散歩できるように、

 リハビリ頑張んないと^^!」

「そうだねっ^^」

帰りに、カマボコをもらってしまった。

牛乳一本で、カマボコ。。倍返し。

次は何を持っていこう。。

口には出さなかったけど、

明日もくるよ。







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それから数日間、いろんな事があった。

元旦から三日連続で救急車を呼んだらしい。

家にゴマが居ない現実に、

深夜、パニックになってしまうようだ。

「もうわるくて、救急車呼べないよぉ・・」

さらにその二日後。

いつものように玄関先から声掛け。

応答無し。電気ついてるのにな。

心配になって覗いてみる、

ストーブが消えてるってことは、

ひとりで買いものでも行けるようになったんかな?

ペロよ、公園行ってみっか。スタスタ・・。

すると公園の裏口から、数人に抱えられたお年寄り。

「ゴマ母さんかな??ど、どしたの〜〜〜?」

坂道で転んだらしく、

うずくまってたところを助けてくれたらしい。

頭を触ってみると、どでかいタンコブ。

「救急車は呼べないよぉ、、もう恥ずかしいよぉ、、」

「いや、これは呼ばなくちゃ。。」

「そうかい?」

それから30分ほどで救急車到着。

オレは帰宅。

その夜、

「還ってきたよ〜^^!異常なしだってっ!

 看護婦さんが、何回でも来てくださいよだって^^!」

声が妙にでかく、元気モリモリになっていた。

やっぱり、誰かとお話しすると元気が出るもんなんだな。

うんうん、わかるわかる。





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その後。

ゴマ母さんの親戚の方が、動いてくれた。

ゴマ母さんを、時々、ゴマに会わせてあげてほしいと、

ご夫婦に、お願いをしてくれたらしい。

なんとか呑んでくれたようだ。

これでゴマ母さんも、少しの希望が持てたはずだ。

よかった。

と、思わなくちゃいけないのかな。





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ペロよ、

ゴマ、よそにもらわれていっちゃったよ。

もうツンツクできないな。

覚えてるか?

遊んでくれたのも、

並んでお散歩したのも、

一緒のオヤツ食べたのも、

味方になってくれたのも、

叱ってくれたり、優しくしてくれたのも、

全部、ゴマが最初だったんだよ。

だって、はじめての散歩の日に、

よし!行くぞー!!って、玄関のドアあけたら、

そこにゴマが居たんだもんな。

ペロの水先案内犬だったのかもな、ゴマ。

きっと、子犬の匂いに気付いて

ドアが開くまで、しばらく待っててくれてたんだよ。

ゴマ母さんがよく話してくれた、

「ゴマは、ペロを息子だと思ってるんだよ^^」は、

本当に、そうだったのかも知れないな。

どうなんだ?ペロよ・・。

そっかペロ、よくわかったよ^^、そっかそっか・・・。

オレは、ゴマ母さんに救われたんだよ。

今のオレのすこぶる社会性も、

最初に会ったゴマ母さんから頂いたものだよ。

明るい声で、堂々と、、、、、、、、





。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。+゚゚。。






「あらら〜おチビちゃん〜何か月〜^^?」


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「ペロちゃんっていうんだ^^、

 はじめましてペロちゃん!」

































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柴犬ペロォ
2011.6.24生まれ♂。本名「夏の黒政号」
娘さんデザインのダンボール造新築一戸建てに住んでいる。
趣味は洗濯物の上でオシッコすることだ、ガハハ^^


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H. 柴犬ペロォ」カテゴリの記事

コメント

胸が詰まりました。涙。ご近所の方とこんな素敵なお付き合いが出来るのは、ペロォさんが思いやりのある優しい方だからなんでしょうね。ワンコは家族なんですよね。そう、言葉で話せない分、繋がりが強くさえ感じます。 そうだ、明日母に連絡しよう、なんて思いました。

ゴマ母さんとは今朝も二度ほどお電話でお話しました。
ここのコメントには書けないようなこともままございますが
やっぱりゴマがいなくなった痛手は相当に大きいものだった
んだな、とつぶさに思わされています。
また会いたいですね、ゴマとは・・・

管理人さん、お手数おかけしました。有難うございました!

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